本プロジェクトは2010年3月末をもって終了いたしました。このページに掲載している内容はプロジェクト終了時点のものです。[2010年4月]

「正課活動」「正課外活動」とは? (Ver.20071211)

本GPは、現在の大学院教育が、正課活動と正課外活動に分離しているという、一般的な傾向を反省的にとらえ、今後、両者を有機的に統合する力動をさらに強くしていこうとする側面ももっています。

実態に即すると、たとえば、フィールドワークと理論研究の組み合わされたアクションリサーチに取り組んでいる領域では、すでに、正課活動と正課外活動の分離は超克されている場合もあります。また、ゼミの教員が理論的な課題を解決することを目的に地域などで実践しそれを演習などの正課活動に絡ませている場合、それを手伝っている院生の活動は、すでに正課と正課外の融合された場への参加行動であるといえるでしょう。

それゆえ、何をもって正課または正課外と言うのかは、実に難しい質問です。正課活動と正課外活動は、必ずしも二項対立的ではなく、その境界線上の活動が実は豊富にあるといえます。

そこで、本GPで「正課外活動の充実」というとき、何を重点的に支援しようとしているのかを、明確にする必要があるでしょう。

本GPでは、正課活動を「単位認定の対象となっている授業の時間内の活動」と、きわめて限定的に定義することとします。もちろん、本来、時間枠が柔軟な指導教員による論文指導や実験的な演習などは、規定の授業時間外の活動であっても正課活動です。しかし、たとえば、演習に付随してフィールドワークを時間外で行なった場合、その活動は正課活動ではありません。

それゆえ、正課外活動は、原則として、正課の単位認定には無関係な活動すべてを指すこととなります。あえて正課外活動を限定的に定義しないのは、「ヒューマンコミュニティ創成マインド」の醸成に資する活動が、いったいどのような場でどのような関係の中で生まれているのかが定かではないからです。「ヒューマンコミュニティ創成マインド」が醸成されるメカニズムを明確にすることは、本GPの隠れた課題ともいえます。

そこで、いったん正課外活動の枠組みを、大きく三つの領域 (実践活動・学術活動・委員会活動) で捉えることとします。以下、その内容を、具体例を交えて説明します。

A. 実践活動
実践活動とは、一定の社会的な課題や問題を解決するために、あるいは一定の理論に基づいて、大学の内外で集団的に行なわれている社会的活動のことです。たとえば、ボランティアを中心とする地域活動や市民活動などが、これに当たります。また、すでに大学で実施されている社会貢献活動も、正課外の実践活動のひとつとなるでしょう。教員が主導するアクションリサーチ (実践的研究) の一部も、学外の多様な組織や人々と協働・共同するような場合は実践活動に位置します。あるいは、院生たちがみずから集団となって何らかの社会的活動を起こすことも、立派な実践活動です。実践活動は、本GPがもっとも支援に力を入れたい領域のひとつです。
B. 学術活動
学術活動とは、言うまでもなく、学会や研究会への参加・参画、研究チームの組織化、研究費獲得のためのグラント申請など、学術的課題の追究を目的とした活動の総称です。これは、すでに自然に行なわれているといえなくもありません。それゆえ、本GPでは、学際的・学術交流的・国際的・協働的と思われる学術活動の支援に、特に力を入れます。ESDやヒトゲノムなどに象徴されるような複数の専門領域による学術活動、あるいはNPOスタッフ・行政職員・企業人などと連携した地域研究などが、本GPとして推奨されるところのものです。また、国際学会の運営など、地球規模での学術活動とそれへの院生の参加も期待されます。正課外活動としての学術活動の発展とそこへの院生の参加を支援することは、本GPの大きな特徴のひとつです。
C. 委員会活動
委員会活動とは、これまで教職員のみで行なってきた「大学のマネジメント」に関する組織的活動の総称です。大学には、その運営のために、教務委員会、学生委員会など、少数の教員によるマネジメント組織がたくさんあります。本GPでは、こうした大学のマネジメントに院生が関与・参画することで、院生のセルフガバナンスあるいはプランニング・マネジメント能力が向上するのではないかと考えています。もちろん、守秘義務等がありますので、教務や学務に関する委員会に無制限に参加はできません。しかし、たとえば、学生委員会の所管する学部生ガイダンス活動や、学舎検討委員会による院生スペース刷新活動、あるいはFD (Faculty Development: 学部改革、授業改善活動) 委員会やキャリアサポート委員会は、院生たちの参加によって、さらに活性化されることでしょう。委員会活動への参加・参画が、院生のエンパワメントと大学の教育改革の双方に意義あるものとなることが期待されます。

以上、三つの領域を設定し、本大学院GPを推進します。各領域での活動が、院生の正課外活動として機能するように、活動自体の刷新を図ると共に、院生たちが参加しやすくなる仕組みを創っていくことが、本GPの課題です。

Updated: 2007/12/20 (Thu) 17:07