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神戸大学日韓交流シンポジウム「当事者性を育てる ~インクルーシヴな社会に向かう日韓の実践~」

趣旨

チラシ
PDFファイルチラシ
(723KB)

EUをはじめとした多くの国で、インクルージョンは社会政策上のキーワードとなっています。グローバリゼーションに伴う富や資源の偏在、人々の移動にともなう社会関係の切断、能力主義の徹底、自己決定や自己責任の原則といったさまざまな現代社会のもつ特徴が、大規模で深刻な社会的排除を生み出しているからです。

今回の企画では、インクルーシヴな社会に向かおうとする日韓の実践を題材として、社会的排除を受けてきた人たち、その周囲にいる人たちが、よりよい社会を構成していく当事者であるという意識をどのように協働して形成していくことができるか、という点に焦点を当て議論します。

深刻な社会的排除をつくりだす社会は、人と人との関係を分断し、排除される人々に対して個人の責任を問うような冷徹な社会といえます。こうした社会を個々人の連帯や協働によって変革する実践のあり方や哲学について、日韓それぞれの経験をもちより、論じ合い共感しあう場をつくることができたらと思います。

開催について

日時
2008年2月2日 (土) 10:00~17:00
会場
神戸大学発達科学部 B104教室 (B棟1階)
対象
学生・教職員、その他関心のある方
参加方法
事前の申し込みが必要です。下記の申し込み先までお願いします。
参加費
無料
主催
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 ヒューマン・コミュニティ創成研究センター (HCセンター)
参加申し込み・お問い合わせ先
担当: 津田 英二
(〒657-8501 兵庫県神戸市灘区鶴甲3-11、電話: 078-803-7972、FAX: 078-803-7971 (内線: 7971)、メール: zda@【続けて「kobe-u.ac.jp」を入力してください】)
備考
本シンポジウムは、大学院GPプロジェクト「正課外活動の充実による大学院教育の実質化」 (2007~2009年度)実践活動支援グループの事業になります。

プログラム

[10:00~10:30] あいさつ・基調報告

登壇者 津田 英二 (神戸大学)

[10:30~12:00] シンポジウム1「インクルーシヴな社会に向かう日韓共通基盤を求めて」

韓国ナザレ大学では、特色ある大学教育の取り組みとして、300名余りのさまざまな障害のある学生を受け入れている (全学生の約6%)。これらの学生が十分に学習や学校生活を楽しむこのできる環境づくりは、教職員、障害のある学生、ない学生といった関係者の協働を不可欠としている。こうした試みの意味や生み出されてきた価値について考えてみる。

また、韓国には福祉館という施設がある。貧困対策としてつくられた地域福祉の拠点であり、多様な社会福祉サービスの提供を行う傍ら、さまざまな住民が集う場として、それぞれの館で特色ある取り組みが展開されている。渾然一体とした福祉館の実践の実態や可能性から学ぶことで、インクルーシヴな社会に向かう実践のヒントを得ることができるのではないかと考える。

こうした韓国の実践は、韓国固有の社会的背景に基づいて、インクルーシヴな社会の形成をめざす実践である。私たちはこれまで、欧米の社会福祉システムから多くを学びモデルをつくってきた。しかし、「当事者」「居場所」などといった英訳が困難な言葉がキーワードになったりするように、日本社会の特質や固有の課題から自生してきたモデルも出てきている。韓国も同じような状況にある。社会関係や社会哲学に共通点の多い韓国の真剣な取り組みから学ぶことで、私たちは、欧米とは相対的に異なる東アジア的特質に基づいた実践方法、実践哲学の形成を、共同してめざすことができるのではないだろうか。

シンポジスト 金 鍾忍 (韓国ナザレ大学)、李 秀貞 (立教大学大学院)
コメンテイター 朴木 佳緒留 (神戸大学)
司会 原田 正樹 (日本福祉大学)

[14:00~16:45] シンポジウム2「当事者性を育てるとはどういうことか」

当事者という語の英訳には苦労することが多い。無理に英訳すると、個人と個人との対立が際だつニュアンスが出てしまう。日本福祉教育・ボランティア学習学会でも、当事者性をキーワードとして社会変革の方向性が議論されたが、ここでも個人と個人の対立や調整よりも、問題解決に向かう連帯が強調された。

とはいえ、個々の社会的排除の現象が社会の問題であることに気づいてきたのは、日本においても、排除されてきた人たちの訴えや主張を通してであった。いわゆる当事者運動は、インクルーシヴな社会を構想する際に、欠かすことのできない重要な資源である。社会的に排除されてきた人たちの存在や言葉が、社会に気づきを与え、社会成員が自分たちの問題として社会的問題に取り組んでいくといったプロセスは、インクルーシヴな社会づくりの根幹部分に位置づく。

この企画では、日本の当事者運動の現状を踏まえ、それが社会にどのようなインパクトをもたらしているか、社会への影響をどのように支援できるか、当事者運動からのインパクトによって人はどう変わりえるかといったことについて論じあう。

シンポジスト 安里 芳樹 (Legal Advocacy for the Defence of People with Disabilities)、佐々木 信行・尾登 悦子 (ピープルファースト東京)、冨永 恭世 (神戸大学)
コメンテイター 松岡 広路 (神戸大学)
司会 横須賀 俊司 (県立広島大学)

[16:45~17:00] 総括

登壇者 末本 誠 (神戸大学)

Updated: 2008/08/01 (Fri) 17:44